山のあなたに茜さす
湿度でぬるんだ暑さでは、ゆるいゼリーをかきわけ歩いているように思え、毎日が消耗しどおしなのにも納得がゆく。
先日、梅雨があけたのはいまからだと思ったのは、雨が上がるや、はっきり急に虫が鳴き始めたからだった。
さっきまでは鳴いていなかったことを言っても、けげんな顔をされるのが不満であったけれど、巻いて戻すわけにもいかず、ついいままで「なかった」ことを証明するのもむずかしい。
来るぞ来るぞと思うが華、来たと思えば半ばを過ぎる。
昼の陽の長さで、夏をはかる癖はどうにも抜けなく、6月でピークは終わっている。
8月からが夏本番ですとテレビが言い立てるのは、本当らしさに欠けており、とうに盛りを過ぎたものをむやみに持ち上げているように聞こえて、いごこちが悪い。
夏は「夕暮れ」だったか、といつも間違えては正される。
ああ、夜だったねえと思い直しながらも、懲りずに間違えてしまうのは、明るさをはらんだ夜の色を、少しでも引き伸ばしたいせいなのだろうとみている。
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